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【高校数学】集合と論理「ド・モルガンの法則」とは
集合論で登場する目新しい記号
「かつ」や「又は」といった考え方は日常でもよく使うと思います。 例えば「このクラスの男子は次の時間○○に移動!」という時も、 「このクラスにいる」かつ「性別が男である」人に対する指示ですよね。 当たり前ですが「このクラスにいる」又は「(他のクラスでも)男である」人全員へ向けた指示ではありません。
数$\mathrm{I A}$で学習する集合は、これをさらに厳密にしたものと捉えることができますが、 他の展開や実数といったものに比べ、取っ付きにくいと感じませんか? 抽象的で何を言っているか分かりにくい上、見たことない記号が登場しますし・・・。 数学である以上厳密性が求められますので致し方ない面もありますが、 今回はこの「集合」について解説していこうと思います。
集合は具体例で考える!
数学全般に言えることですが、集合を学習する場合は特に、
身近な例で考えていくことが大切
です。 「$A$に属する元が全て$B$に属することを$A\subset B$と表し・・・」等と考えるよりも 「男子中学生は全員男子だ」と言えば当たり前のことのようにイメージできます。 この他に「数学のテストに合格した生徒の集まり」や「アンケートでYesと記入した人全員」等、 集合に入るかどうかが確定するなら具体例はなんでも構いませんが、この記事では
・$A$は「数学のテストに合格した生徒の集まり」
・$B$は「英語のテストに合格した生徒の集まり」
であるということにしましょう。テストには合格か不合格しかなく、未受験や欠席などはありません。 教科書等の問題では、集合の要素は整数である場合が多いですが、生徒の出席番号等と考えればよいでしょう。 「3の倍数全体」なら「出席番号が3の倍数の人全員」という感じです。 今回は「かつ」「又は」「否定」の3つと、有名な「ド・モルガンの法則」を取り上げます。
「かつ」と「又は」
数学では$A$と$B$の
「どちらにも」属している人の集まりを$A\cap B$
と表します。 また、$A$と$B$の
「どちらかには」属している人の集まりを$A\cup B$
と表します。 以下のような「ベン図」を書くと分かりやすいですね。
グランドに全校生徒が集められている状況を想像してください。日本語で平たく表すと、
・$A\cap B$は「数学と英語両方のテストに合格した優秀な生徒の集まり」
・$A\cup B$は「数学か英語のどちらかのテストには合格した生徒の集まり」
ということです。ここで
$A\cup B$には「両方合格した人」も含まれる
ということに注意して下さい。 合格を2コもぎ取った人も、合格を1つだけ取った人も両方含まれます。 「少なくとも一方に合格」といった方が分かりやすいかもしれません。
ちなみにベン図の外側、つまりグランドの端っこには両方不合格だった人が残念そうに立っていることになりますね。 なお、ネーミングについてですが、記号「$\cap$」を「キャップ(cap$\ $ 帽子)」、「$\cup$」を「カップ(cup$\ $ コップ)」と呼びます。 $A\cap B$は積集合、$A\cup B$は和集合と呼ばれます。
「否定」
否定それ自体は簡単で、「集合に属していないものが作る集合」を表します。 否定する部分の上に横線を引くことで表現します。例えば、
・$\overline{A}$は「数学のテストに不合格だった生徒の集まり」
・$\overline{B}$は「英語のテストに不合格だった生徒の集まり」
ということです。ではここで「数学が不合格だったが英語は合格した」人の集合を表してみましょう。 この日本語を少しずつ数式に書き換えていきます。 まずこれを「かつ」を使って表現すると、「数学が不合格だ$\ $かつ$\ $英語は合格だ」となります。 ここで「数学が不合格だ」$\rightarrow$「$A$に属さない」$\rightarrow\overline{A}$ですし、 「英語は合格だ」$\rightarrow$「$B$に属する」$\rightarrow B$ということですから、「かつ」を表す記号である「$\cap$」を使うと結局
\begin{eqnarray*} 「数学が不合格だったが英語は合格した」\rightarrow「\overline{A}\cap B」 \end{eqnarray*}
となりますね。 条件と集合は本来別物ですので少し語弊を含みますが、 集合の記号が入っていても、 日本語に直して考えることができるのだと実感できたと思います。 ベン図だと以下の部分が該当します。
このような感じで、否定の記号と$\cap$や$\cup$を合わせて使えば、様々なことが表現できます。例えば、
・$\overline{A}\cup \overline{B}$は「数学が不合格か、又は英語が不合格だった生徒の集まり」
・$\overline{A\cap B}$は「両方のテストに合格した、というわけではない生徒の集まり」
ということになります。 $\overline{A\cap B}$は、$A\cap B$全体の否定というわけですね。 同じ内容を日本語でも表せますが、
集合の記号を使えばより簡潔に記述することができます
。
ド・モルガンの法則
最後にド・モルガンの法則について紹介します。 先ほどの例で、$\overline{A}\cup \overline{B}$と$\overline{A\cap B}$は実は同じものを表しています。 共に、
「1つでも不合格だった人」
ということに変わりはありませんよね。 また次の集合を考えてみてください。
・$\overline{A}\cap\overline{B}$は「数学が不合格で、英語も不合格だった生徒の集まり」
・$\overline{A\cup B}$は「どちらかのテストに合格した、というわけではない生徒の集まり」
この二つも全く同じ集合であると分かると思います。 要するに
「両方のテストに不合格だった人」
の集まりを指しています。
実をいうとド・モルガンの法則は、このことを式で表現しているだけにすぎません。 つまり、
\begin{eqnarray*} \overline{A\cap B}&=&\overline{A}\cup \overline{B}\\ \overline{A\cup B}&=&\overline{A}\cap\overline{B} \end{eqnarray*}
の二つを合わせてド・モルガンの法則と呼んでいる、ということです。 ベン図でいうと次のようになります。
「否定の棒をぶった切ったら、$\cap$と$\cup$が入れ替わる」と憶えれば良いのですが、 成立する理由をしっかりと把握しておきましょう。
まとめ
今回の話をまとめると、次のようになります。
集合は具体例で考える!
分からなくなったらベン図を描く!
$\cap$は「かつ」、$\cup$は「又は」、横線は否定
ド・モルガンの法則:「否定の棒をぶった切ったら、$\cap$と$\cup$が入れ替わる」
包含関係や要素の個数については触れていませんが、次回以降に説明できればと思います。 集合が3つ以上出てきても、高校数学までならベン図を書けば何とかなるはずですので、 色々な問題に挑戦してみてください。