【高校数学】微分するってどういうこと?
導入:高校で習う「微分」
微分は様々な分野で利用されている非常に便利なものなので、 理系の人は必ず習うと思います。 多項式の微分は文系の人も勉強した記憶があるのではないでしょうか。 数Ⅲでは三角関数や指数関数などの微分も習いますね。

とはいえ、意味も分からずひたすら数式処理に追われていたという人もいるのではないでしょうか。 もともと数学が抽象的な科目な上に、「極限」「導関数」「極値」「単調増加」といった 難しそうな用語も多く登場しますので、 数学が苦手な方にとっては地獄だったかもしれません。

そこで今回は、この「微分」をなるべく分かりやすくお伝えします。 少し厳密さが足りない部分もありますが、まずは理解することを目的に説明していきます。
中学3年で習う展開と因数分解の知識があればわかる
ようにしますね。

「微分する」$=$「変化の割合を求める」
まず、微分が利用される理由は
「どのくらいのペースで変化するか」
が計算できるからです。 毎月のお小遣いを例として考えてみます。 ${\rm A}$君と${\rm B}$君は次の表の様にお小遣いをもらっているとします。

${\rm A}$君金額
1月1000円
2月1100円
3月1200円
4月1300円
5月1400円
6月1500円
    
${\rm B}$君金額
1月700円
2月1100円
3月1500円
4月1900円
5月2300円
6月2700円

1月は${\rm A}$君の方がたくさんもらっていましたが、 6月は${\rm B}$君のお小遣いの方が多くなっています。 なぜかというと、${\rm B}$君のお小遣いの増え方がハンパなかったからですね。 ${\rm A}$君のお小遣いは1月ごとに
$100$円
しか増えていないのに、 ${\rm B}$君のは
$400$円
も増えています。

実は(関数を)微分すると、上記の
$100$円
$400$円
といった
お小遣い($y$の値)がひと月($x$の増加量1)あたりにどれだけ変わったか
が自動的に求まります。

中学2年で習った変化の割合というやつですね。 上記の例では1月ごとの値しかなく、しかも一定のペースでしか増加しないので、 微分を使う意味はありませんが、もっと複雑な関数になると事情は変わります。

微分と極限
ここからは関数$y=\frac{1}{4}x^2$について考えてみましょう。 お小遣いの例のように、ずっと一定のペースで変化するわけではない($=$グラフがカーブする)ので、 変化の激しさ($=$微分係数)も刻一刻と変わっていきます。 そのため、「$x=$○○での変化の激しさは△△」といった言い方しかできなくなります。 ここでは一旦、$x=2$における激しさを考えていきましょう。

$x$が$2$から$6$に変わった時の変化の割合は、

\begin{eqnarray*} \frac{9-1}{6-2}=2 \end{eqnarray*}

となります。同じようにいろいろな変化の割合を計算するとこのようになります。

$x$の変化変化の割合
$2$から$6$$2$
$2$から$5$$1.75$
$2$から$4$$1.5$
$2$から$3$$1.25$
$2$から$2.6$$1.15$
$2$から$2.2$$1.05$
$2$から$2.1$$1.025$
    

グラフを見る通り、直線はグラフの接線に近づいていきます。 $x=2$の近くでは、$xの$変域が狭くなるに従い、変化の割合はどんどん$1に近づくと予想できますね。

これは恐らく正しいのですが、念のため文字を使って計算してみましょう。 まず、$x$が$2$から$2+h$まで変化したときの変化の割合は、 $y$の増加量を$x$の増加量で割ればいいので、

\begin{eqnarray*} \frac{\Delta y}{\Delta x}=\left\{\frac{1}{4}\left( 2+h \right)^2-\frac{1}{4}\times 2^2\right\}\div \left(2+h-2\right) \end{eqnarray*}

と表せますね。カッコ付けて$\Delta$を使いましたが、ここでは「増加量」を表すと思ってください。 $\Delta y$なら$y$の増加量という意味です。これを少し計算すると、

\begin{eqnarray*} \frac{\Delta y}{\Delta x} &=&\left\{\frac{1}{4}\left( 4+4h+h^2 \right)-1\right\}\div h\\ &=&\left( h+\frac{1}{4}h^2 \right)\div h\\ &=&1+\frac{h}{4} \end{eqnarray*}

こんな感じです。ここで$h$を限りなく$0$に近づけていくと、変化の割合は当然$1$に限りなく近づいていきますね。 このように、
限りなく近づけることを極限をとると呼び
、次の様に書きます。

\begin{eqnarray*} \lim_{h\to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x} &=&\lim_{h\to 0}\left( 1+\frac{h}{4} \right)\\ &=&1 \end{eqnarray*}

やはり予想は正しく、「$x=2$における$y=\frac{1}{4}x^2$の変化の激しさは1である」ということが言えます。 $y=\frac{1}{4}x^2$の$x=2$の部分にピッタリと物差しをあてると、その傾きは1になる、と言ってもいいですね。 とはいえこれだけだと、グラフのほかの部分ではどうなるの?ってなりますので、 $x=2$とせず、$x$を残したまま同じ計算をしてみましょう。

$x$から$x+h$までの変化の割合(=平均変化率)を考えると、

\begin{eqnarray*} \frac{\Delta y}{\Delta x} &=&\left\{\frac{1}{4}\left( x+h \right)^2-\frac{1}{4}x^2\right\}\div \left(x+h-x\right)\\ &=&\left\{\frac{1}{4}\left( x^2+2hx+h^2 \right)-\frac{1}{4} x^2\right\}\div h\\ &=&\left( \frac{hx}{2}+\frac{1}{4}h^2 \right)\div h\\ &=&\frac{x}{2}+\frac{h}{4} \end{eqnarray*}

さらっとやりましたがどうやって式を変形しているか目で追ってみてください。 一見難しそうですが、展開公式や文字式の整理を使っているだけなので、 落ち着いて一行ずつ考えると理解してもらえると思います。次に極限をとると、

\begin{eqnarray*} \lim_{h\to 0}\frac{\Delta y}{\Delta x} &=&\lim_{h\to 0}\left( \frac{x}{2}+\frac{h}{4} \right)\\ &=&\frac{x}{2} \end{eqnarray*}

となりますね。この$\frac{x}{2}$を導関数と呼び、普通$y^\prime$と表します。 $y=\frac{1}{4}x^2$という関数から$y^\prime =\frac{x}{2}$という関数を作りましたが、 このように
導関数$y^\prime$を求めることを微分するといいます
。 $y=\frac{1}{4}x^2$を微分すると、$y^\prime =\frac{x}{2}$だ、という風にも表現できます。

この$y^\prime$の式に$x$の値を代入すれば、その場所での接線の傾きがすぐに計算できます。 $x=2$では確かに$y^\prime =1$になりますし、$x$が増えると接線の傾きがどんどん急になるというのも グラフの形からわかると思います。

つまり、
いろんな$x$における接線の傾きを集めてきたものが導関数
ということですね。

まとめ:微分を使うと接線の傾きが分かる!
$y=\frac{1}{4}x^2$と同様に、そのほかの関数も微分することができます。 $y=x^3+x^2+x+1$といった$3$次関数や三角関数、指数関数なども 基本的に極限を使えば導関数を求めることができます。

とはいえ、いちいち極限を取るのは面倒くさいので、例えば

\begin{eqnarray*} x^n=nx^{n-1}\ \ \ \ \left( 1 < n\right) \end{eqnarray*}

という公式を使えば、多項式関数はすぐに微分することができます。 これをうまく使えば、グラフの概形が書けたりもするのですが、 長くなるので別の機会にお話しできればと思います。

関数を微分すれば導関数が求まる!

導関数に$x$の値を代入すれば接線の傾きが求まる!

$x^n=nx^{n-1}\ \ \left( 1< n\right)$は便利


指示通りに計算するだけなら、微分の公式を憶えてしまうだけで良いのですが、 しっかりと微分の意味を理解し、
自分が何を計算しているのか常に意識して
問題と向き合ってくださいね。