【中学数学】角度の公式と使い方
角度の問題の解き方
今回は公立中学では2年で習う、角度に関する問題を解説します。 下記のようなものですね。

この単元は直感的に分かりやすく比較的簡単で、得意な人も多いと思いますが、 複雑になると一気に解けなくなる人も多い印象を受けます。

図形の問題全般(特に高校数Aの図形問題)に言えることですが、
難易度が上がると「思いつき・発想」が要求される場合が増えてきます
。 今回は基礎知識を紹介し、証明や厳密性よりも「どうやって発想するか」に主眼を当てて 進めたいと思います。

基本:対頂角 同位角 錯角
まず最初に「対頂角 同位角 錯角」の3つについて解説します。 下の図を見てください。 同位角と錯角は「平行線」に対して使うことが多いですが、 厳密には「$l,\ m$が平行ではないとき」にも使えるため、
「平行線の」同位角は等しいというのが正しい表現
です。

ここで、図中の$l,\ m$が平行なら、同位角と錯角は等しくなります。 三角形の内角の和が$180^{\circ}$になることなどもこれで説明できます。

「なぜ平行線の同位角と錯角が等しいの?」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、 ユークリッド幾何の公理系という難しい話になってしまいますので省略します。 これらの基本に加え、次のようなテクニックを使うことも多いです。 俗に「スリッパ」「リボン」等と呼ばれていて有用なのですが、 正式名称ではないので証明では(少なくとも俗称は)使わないようにしましょう。

なお、$n$角形の内角の和$S$に関する次の公式

\begin{eqnarray*} S=180\times\left( n-2 \right) \end{eqnarray*}

も使う場合がありますが、これの詳細は別の機会にお話しできればと思います。 ここではとりあえず、

   ・三角形の内角の和は$180^\circ$
   ・正方形の一つの内角は$90^\circ$

であることを理解していれば大丈夫です。 最初に紹介した様な問題は基本的に、
これらの知識を組み合わせていけば解くことができます


正しい解法ではなく「自分ならどう組み合わせるか」が大切
ここで図形の話ではなく、数学全般の話を挟みます。

文章題の利用問題や証明問題の解き方を伝える際「基本的な例題を解説する」というのは非常に有効です。 勿論生徒の能力や性格によりけりですが、 特に文章題の場合、計算方法だけ教えて丸投げしても 「どうやっていいか分からず完全にストップ」ということが頻繁に起こります。 なので、「ベタなパターンはこうするよ」っていうのを 丁寧に教えることが有効である場合が多いです(絶対じゃないですよ!)。

特に一次方程式を教わったすぐの段階で、自分から少しでも立式できることは稀かもしれません。 一番の理由は恐らく方程式が「抽象的だから」です。
方程式の計算は出来ても、その意味を本当に理解できるのは、立式する練習を積んだ後
だと思います。 数学全般に言えることですが、本当は何も教えずに「自分ならこうしたい!」という方法を引き出すのがベストですが、 前述の理由から普通はなかなかそうはいかないものです。

ですが角度の場合は話が別です。 図形の問題であれば「ここの角度はいくつ?」と具体的に指し示すことができますし、 割合や単位量といった概念もあまり絡んできません。 そして何より変数や定数を操作する必要がほとんどありません。

言い換えると、前述の知識を適用できないかどうか考えて、 直線で結んでみる、平行線を引いてみる、こことここ同じっぽいなとアタリをつけてみる等々、
図を見ていじくりまわしてみることが可能
なわけですね。 生徒に自由に試行させるために、 「この角度一体何度になると思う??」「君ならどうやって解いてみる??」と丸投げしてみることが可能です。 正解できるか、あるいは論理的に正しいかは確かに重要ですが、それ以上に大切な
「自分からやってみる」姿勢を身に付けるのに、この単元は非常に有用
だと思います。

次からは解法の紹介になりますが、これを見る前に一度「自分ならどうやって解くか」を考えてくださいね。 ネットの記事だと一方向に情報を伝えるだけになってしまいますが、 数学をする時「自分ならこうする!」という気持ちは非常に大切ですよ。 もう一度問題を載せるので、一旦自分で考えてみてください。

「ああでもない、こうでもない」と悩むことができた方がラッキーです。 もしすぐに解けてしまったなら、もっと難しい問題にチャレンジしてみてください。

解法が見えないようにスペースを空けます。

























具体的な解法
ここからは、前述の問題に対する様々な解法を紹介します。 どれがベストというわけではなく、 「例えばこんな解き方もあるよ」ということですので、 どれかにこだわらない方がいいと思います。 まず1つ目の方法は「平行線を入れる」方法です。

図のように平行線を追加すると、錯角や同位角がたくさん出てきますので、答えを出すことができますね。 2つ目の方法は「三角形を作り出す」方法です。

三角形の内角の和が$180^\circ$であることと、錯角や同位角を利用すれば解けるはずです。 左側は「スリッパ」を使うと楽ですね。 3つ目の方法は「垂線を引く」方法です。

直角三角形に注目することで、これでも解けますね。

なお、ベクトルや三角比といっ高校生の知識を使っても解けると思いますが、 時間がかかってしまいますので普通テストでは使いませんが、 やってみてもよい勉強になると思います。 3つの解法を紹介しましたが、 皆の解法はどれに一番近くなりましたか?

どの解法が一番というわけではなく、そもそも解法がこの3つだけとは限りません(というより多分無数にある)ので、 どんな解法であっても「ロジックが正しい限り」正解です。 時間効率を考えると、問題の設定次第で解法ごとに違いが生じるため、様々な解き方を身に付けておくことは重要ですが、 「思いつく」=「適用できる解法が見つかる」とうことですから、
「思いつくまで試行錯誤する」 ことも同じくらい大切なことです


発想しやすい状況に持ち込もう
あくまで宿題や課題をする段階での話ですが、 発想力を鍛えるのならあまりスピードや効率にとらわれない方がよいです。 図形問題を解く汎用的なポイントとして

   ・自分で図を描く
   ・(無駄でもいいから)補助線を引いてみる
   ・(無駄かもしれないけど)やり方を変えてみる
   ・「○○っぽい所」を見つける

等が挙げられます。
色々試行錯誤して得られた解法は、なかなか忘れないもの
です。 もし上記の方針を取ってみてもダメなら「使えそうな公式を探す」とよいです。 それでもだめなら解説を見て、「こういう場合はこうすりゃいいのか!」と 作戦を吸収してください。

「どうやって解くのか分からんけど、こうしてみればいいかも?」と
試行錯誤している時に発想力は身に付きます
。 知識の吸収だけではなく、「自分で情報を整理してあれこれ悩む」学習習慣を身に付けましょう。